読売新聞

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□ 淡江大学

台北市に隣接し、海に沈む夕日の美しさで有名な淡水。淡江大学は、観光スポットから離れた高台にある私立の総合大学です。注目は、昨年9月にオープンした日本の作家・村上春樹の作品などを研究する「村上春樹研究センター」。台湾でも村上作品は若者を中心に人気があり、CMや流行語にもなるほどです。

もともとは、小さな図書室を兼ねた「村上春樹研究室」として4年前にスタート。それが今では、日本語版はもちろん、台湾版など世界10か国の村上作品の翻訳版が書架に並ぶ「研究センター」に。資料や論文、さらに本部の図書館が収蔵する書籍も合わせると、1500点以上になります。また、村上作品に関するシンポジウムも毎年主催するなど、同センターは文字通り台湾における村上研究の中心です。

同センターを担当する日本語文学科の曽秋桂教授は、「村上作品の魅力を台湾の若い人に伝えていくとともに、文学だけでなく社会的な広がりも視野に入れた『村上学』として研究していきたい。いつか村上さんにも台湾に来てもらいたいです」とエネルギッシュに話してくれました。

残念ながら、村上作品は20年以上前に「ノルウェイの森」を読んだだけという筆者。帰国したら、さっそく自宅に積読している他の作品を一読しようと思いました。

□ 台北日本人学校

淡水から台北に地下鉄(MRT)で戻る途中に、台北日本人学校があります。門を入ると「こんにちは!」と子供たちの元気なあいさつが聞こえてきました。同校では現在、約70名の教職員の下に、小中学生合わせて約780名が学んでいます。図書室には約2万冊の蔵書があり、PTAによるバザーの収益金を活用したり、日本などからの寄贈を受けて少しずつ本を増やしているそうです。

ちょうど小学2年生が静かに読書をしている図書室を見学しました。書架の一角に、「台湾コーナー」と張り紙された小さな本棚がありました。約200冊あるという同コーナーには、台湾や日台関係について書かれた日本語や中国語の本が並んでいました。図書室を担当する王麗珠先生は、「子供たちが台湾への理解を深めるのに大変役立っています。でも、小中学生にも分かりやすい新しい本はあまり多くありません。寄贈などを通して少しずつ増やしていければ」と話していました。

淡江大学の「村上春樹研究センター」も台北日本人学校も小さな「図書室」ですが、日台を結ぶこうした“畑”にまかれた本という日本文化の“種”は、しっかり根付いていると感じました。若い世代の交流を通じ、日台の相互理解がいっそう深まることを期待し、酷暑の台北を後にしました。

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