読売新聞

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約1年ぶりに台湾の地を踏み、再び各地の図書館などを回ってきました。今回は、伝統とモダンが共存する地方都市の台南、台中両市の大学図書館を紹介します。

□ 成功大学

台湾の古都・台南。日本植民地時代に作られた駅舎のすぐ北側が、東京ドーム約40個分という成功大学の広大なキャンパスです。その校名は、17世紀中ごろ台南を中心に活躍した歴史上の人物で、当時台湾を占拠していたオランダ人を追放した民族の英雄・鄭成功にちなんで命名されました。現在は、文学部から医学部までそろった台湾南部屈指の総合大学です。

図書館の目玉と言えば、独自に収集した古文書や資料が思い浮かびますが、成功大学図書館にも日本植民地時代の貴重な資料が約8,600冊保存されています。とくに、同大の前身は昭和6年(1931年)に開校した「台南高等工業学校」だった経緯から、明治期以降の電気や機械工学、建築関係の学術書が多く、貴重な古書が空調の効いた部屋でズラリと背表紙を並べていました。

同館情報サービス担当の羅静純さんに案内されて5階へ。ここは下の4階とフロアの真ん中が吹き抜けになっており、開放感たっぷり。一方、四方を囲む壁は、植民地時代の台南で使われ、当時の街の古い建物を思い出させる赤レンガを使っています。吹き抜けが作り出す明るさの中に、赤レンガが作る伝統の重みが絶妙に生かされていると感じました。

□ 静宜大学

台湾中部・台中市の郊外にあるミッション系の静宜大学は、日本語を使う人材の育成でも有名な大学です。日本語文学科では、1~4年生計500名近い学生が熱心に日本語を勉強しています。その学生たちを支える図書館は、デザイン関係のパビリオンかと思わせるようなとてもモダンな内部が特徴です。

「とにかく学生が入りやすく利用しやすい図書館を目指しました」と、案内をしてくれた図書館レファレンス課長の姜義台さんは強調します。なるほど、出入り口のある1階フロアは、ソファが各所にゆったりと置かれ、くつろぎながら読書ができる雰囲気。どこの図書館でも見られるようなスチールのがっしりとした開架式書架は見られず、木箱を組み合わせたような柔らかな“書棚”にさりげなく本が置かれ、思わず手にとって読みたくなります。

こうした本に親しみやすい雰囲気作りに、「日本で話題となった佐賀県の武雄市図書館も参考にさせてもらいました」と姜課長。さらに1階には「文思診療室」と何やら病院を思わせる小部屋も。ここでは、「何を読んだらよいか分からない」「どう書けばよいか筆が進まない」といった学生の読書や創作に関する悩みについて、同大で教えている小説家や詩人の教師らが交替で答えてくれるそうです。うらやましいですね。

このほか、館内にはコーヒーなどを飲みながら読書や討論ができる小コーナーや、ソファに座ってマルチメディアの大画面映像や大音量の音楽が楽しめる視聴覚室など、利用者のさまざまなニーズに対応しています。この図書館は、勉強や研究のための「建物」というより、読書や鑑賞を楽しむ「館」という言葉が似合う感じです。じゅうたんが敷かれた開架式の図書室では、カップルでしょうか、男女二人の学生が仲良く腹ばいになって本のページをめくっていました。

(2016年5月24日)

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