とにかくまずは、不老長寿の方をご紹介しましょう。めでたく100歳を迎えた金沢市の女性です(「人生は60から 元気で小皺一つない100歳のお婆さん 不老長寿の秘訣を訊く」、1935年6月25日朝刊)。この当時の女性の平均寿命は約50歳だったので、100歳というのはまさに不老長寿でしょう。この女性は17歳で結婚。夫は家事にも協力してくれる人だったのですが、60歳で死別。家庭の事情で10人以上の孫を育てたそうです。記事では、長生きできた原因として、どんな医者の手当てよりも効くというくず湯2杯と、家庭円満をあげています。そして、小じわ一つない美しいお肌の秘密は、卵の白身で洗顔することだそうです。
今風に言えば「アンチエイジング」の体現者として登場するのが、女優の初代・水谷八重子さん(1905~79)。「延びる“中年美の季節” まず若々しい気もち 体操でからだの線を守る」(1960年7月7日朝刊)という記事の中で、若さの秘密は、どんなに疲れていても入浴と体操を欠かさず、また、気分転換を図るため、帰宅後しばらく音楽を聴いたり、家人とおしゃべりするなど、積極的に楽しみの時間を持つことだと語っています。
次は理論編です。1958年に全50回の連載「若返りコース」(1958年1月7日~4月12日)が始まります。記者が専門医に聞いた話をまとめたもので、老化防止と健康増進法が広くかつ具体的に網羅されています。「ビタミンB1の秘密 いわば“体の潤滑油”」(7回)、「脳のスポーツ 読書や投書はよい訓練」(11回)、「肥満型はあぶない 減食で25歳時の体重に」(16回)、「腸の中の毒素を一掃 “断食”という手も」(39回)、「今からでも遅くない 60歳からは車を使わず」(46回)など、現代でも十分通用するようなトピックが並んでいます。ちなみにこの連載、連載終了後、わずか数か月で単行本化されており、好評だったことがうかがわれます。
ところで最近は、「老人も積極的に肉を食べた方がいい」という説をよく聞きますね。しかし、もう既に30年以上前の記事、「粗食じゃやはり長寿ムリ」(1987年5月27日朝刊)では、「年をとってからも健康な人は、たんぱく質をきちんと取っている。いろんな物をまんべんなく、三十品目以上食べるのが望ましい」という専門家の言葉を紹介しているのです。そして記者は、「人類が追いかけてきた不老長寿の秘薬とは、つまり動物性たんぱく質、そしてバランスのとれた食事内容ということか」と述べ、飽食時代の栄養不足に警鐘を鳴らしています。(も)