虫めがね

「晩酌」

 ワインの新酒が出たり、かん酒がおいしくなったりで、晩酌が進む時期ですね。「晩酌」で横断検索すると、明治・大正・昭和で200件以上、平成・令和で1600件以上がヒットします。話題は様々ですが、中には思わず姿勢を正してしまうような話もあります。
 「親孝行で評判の髪結い、晩酌をやめて新聞購読 客に読んで聞かせ盛況」(1877年2月24日朝刊)。ここで紹介されているのは、野州都賀郡間々田宿(現在の栃木県小山市)に住む髪結いの伊之吉さんです。この人、「心掛けのよい者で老母には優しく仕え、職業も励んで仕事の暇には懇意な者から送ってもらった古い新聞を見て、これはいいものと思い(中略)毎晩のむ酒をやめて新聞を取り、また客にも見せたり読んで聞かせたりするので、客もおのずと殖え、伊之吉も大いに励んで勉強するゆえ、近所でも評判」だったそうです。こういう方がいたからこそ、新聞が普及したのでしょう。伊之吉さん、本当に頭が下がります。
 お恥ずかしいことに筆者など、晩酌をやめるどころか、ついつい飲み過ぎてしまい、翌日後悔することが頻繁にあります。なにか自分を戒めるいい心構えはないかと、試しに「晩酌論」で検索したところ、なんと1件ありました! 伝授してくれたのは時の総理大臣、米内光政(「米内さん『晩酌論』酔えぬを忍ぶが時局 幸い代用食が生来の好物」=1940年1月17日朝刊)。「古くから僕は酒に3大原則を持っている。第一に過去の労苦を慰めること。第二に現在を楽しむ。第三に将来の仕事をやるための英気を養う。これで飲んどる」。なるほど、過去・現在・未来に思いをはせながら飲む。これはきれいな飲み方ですね。
 よく肝に銘じて、年末から正月を乗り切りたいと思います。(も)