虫めがね

「月」

 十五夜、十三夜と、9月から10月は月見シーズンです。秋は空気が澄んで空が美しい季節。そこで、ヨミダスから、思わず夜空を見上げたくなるような記事をいくつか。

 お月見の話題になると、新聞の見出しも風流です。十五夜当日の1993年9月30日東京夕刊「背伸びして名月を待つススキかな」。天候に恵まれず、中秋の名月が見られるのは、一部地域に限られそうだという記事。名月を引き立てるススキはよく伸びて準備万端整っているのに……。見出しが5・7・5の俳句調にそろえられ、事件記事の多い社会面に風情を添えています。

 十三夜でも印象的な見出しを一句。1988年10月24日東京朝刊「ご病床鏡に映す十三夜」は、闘病中だった昭和天皇のお月見の話。容体は比較的安定していたものの、皇居寝室のベッドから直接空が見えず、側近の機転で鏡に映して月を楽しまれました。「少し欠けているね」とおっしゃり、ご満足の様子だったそうです。月の原稿を前にしては、締め切りに追われる編成部(原稿に見出しを付け、レイアウトする部署)の記者といえども、一句ひねりたくなるのが人情のようです。(む)