近年、筋トレブームも加速し、気軽に通えるトレーニング施設も増えてきましたが、ヨミダスで振り返ってみても、いつの時代も筋肉への欲望はやまないようです。
★「筋肉」はいつから?
まず、「筋肉」という概念はいつごろから紙面に登場したのでしょうか。
「筋肉」というキーワードで検索してみると、最初の記事は1887年(明治20年)。6月22日付で<ゴム人間出現 筋肉を伸縮、自在に体の形を変化/フランス>という、漫画のようなタイトルの記事がありました。
「その筋肉を伸縮すること自由自在にして時としては小さく堅き球の如くに体を縮め時としては薄く広き紙の如くにこれを伸ばし」という特殊能力のあるフランスのパン職人を紹介していますが、果たして真実は…。
ともあれ、この頃には「筋肉」という組織が身体を動かしているという知識は一般的なものになっていたようですね。
★トレーニング器具
トレーニング器具も明治期から様々に考案・工夫の跡が見られて面白いです。
1907年12月2日には東京の発明家が自作した「自動運動器」を紹介する記事も。馬の形の台の下に三輪が取り付けられ、またがって足踏みをすると下の車輪が回転して前に進むようになっている、大掛かりなマシンです。遊び心を持ちながら楽しく汗を流すにはどうしたらいいかという苦悩、努力の跡がうかがえます。
★トレーニング施設
明治9年に「近々に浅草の公園地に体操場をこしらえて一時間一人まへ五厘づつにて体操をさせる目論見をしているものがあると聞きました」(1876年8月26日<公園地に体操場設置を構想、1人1時間5厘で開放予定>)という短い伝聞記事がありました。
この目論見はその後、実現したのかどうか不明ですが、スポーツクラブやトレーニングジムのはしり…(?)にあたりそうな発想がもう明治初期にあったとは驚きです。
1988年(昭和63年)にはJR東海とサントリーが期間限定で東京―新大阪間の新幹線「こだま」内になんと“走るトレーニングジム”を開設。ウェアやタオル、靴を無料で貸し出し、忙しいビジネスマンも乗車中にトレーニングに励むことができるという、バブル期らしい企画もありました(6月21日朝刊<新幹線の中でトレーニング 東京-新大阪間>)。
★爽快な気持ちで
ヨミダスから様々な筋肉やトレーニングの話題をご紹介しましたが、最後に1920年(大正9年)11月17日朝刊の婦人欄から、「体育熱心の体育課長」とよばれた、当時の東京府学務課長の言葉をお届けします。
「個人の健康状態によって、その時の気持ちによって適宜にすればよいので、従来のやうにいやでも何でも圧制的にやらせると云ふではありません、(中略)体操も決して従来の筋肉主義とか技術主義とかに捉はれることなくまた苦痛を感じてもなおそれを耐えてすると云ふ風なことでなく爽快な気持ちで喜んでやる程度でよろしいのです」
と、無理にやらされたりひたすら回数だけをこなしたりして身体を痛めつけるような“筋肉主義”をいましめ、運動の後に気持ちよく他の仕事や活動に向かえるようでなければならないと語ります。現代においても大切な教訓ですね。
「筋トレ」で近年の記事を検索すると、手軽にできるトレーニングの方法や、トレーニングの事故例などの記事も発見できます。それらを参考に、皆さまもぜひ、けがややり過ぎに注意しながら、爽快に心地良く生きられる身体づくりのための筋力アップを目指してみてくださいね。(真)