虫めがね

「災害報道と防災特集」

 様々な自然災害が毎年のように猛威を振るう「災害大国」である日本。本年も、元日に発生した能登半島地震をはじめとして、地震や台風、大雨の被害が相次ぎました。

 読売新聞では、災害時の報道に力を入れ、防災特集や災害関連の連載も数多く掲載しています。ヨミダスで災害報道を振り返りながら、災害時や防災に役立つ情報を調べる方法を探りました。

★能登半島地震の報道

 2024年1月1日夕、石川県能登地方を震源とする震度7の地震が発生しました。

 読売新聞は、本来は休刊日であった1月2日と、翌3日の2日間にわたって、いずれも4ページ建ての特別号外を発行しました。

 いち早く当時の状況を伝えた2日付の特別号外には、見開きで<地割れ ビル倒壊><支援の手を 早く>という鬼気迫る見出しと、輪島市内で倒壊したビルの地震発生当日の写真が大きく掲載され、被害のすさまじさがわかります。

 最後のページには<輪島市街地 炎包む 救助現場 響く「頑張れ」>という見出しと、地震発生当日の夜に輪島市の市街地が炎に包まれる写真を収めており、写真のキャプションには「爆発音のようなものも聞こえた」と、現場の記者の生々しい証言が添えられています。

ビル倒壊現場での救助活動や、取り残された人に「頑張れ」「死ぬんじゃない」と声をかけ続ける人々の姿も記録しています。

 

 読売新聞社では震災当日、輪島通信部の開設のため記者が現地にとどまっていました。

 通信部の建物も半壊状態となり自身も被災する中、孤軍奮闘で発生直後の状況を取材し、当日の現地の状況を写真とともに伝えることができたのは読売新聞だけでした。
 また、地震被害で交通網が寸断されていたため、この特別号外は現地に向かう記者が通行可能なルートを探しつつ、自らの車で避難所や役所に届けました。

 1日の地震発生時点からの時系列のドキュメントや、避難所の開設や道路・鉄道の状況をまとめた「震災掲示板」も掲載しており、停電や通信障害で情報が遮断されている中でも必要な情報を被災者の方々に届けられるよう、総力を挙げた紙面となっています。

 能登半島地震の特別号外は、ヨミダスの検索欄に[特別号外]と入力し、1月2~3日の日付指定検索をするなどして閲覧できます。

 

★被災地の医療情報

 医療情報の連載「医療ルネサンス」では、1月18日から2月7日にわたって全15回、<緊急連載 能登地震>として能登半島地震被災地の医療情報をリポートしました。

 地震でけがを負った高齢の避難者や、被災した透析患者の病院での受け入れ状況など、様々なケースを各回で取り上げ、「地震の怖さの方が大きくて当初は痛みを感じず、こんなに大きな傷だとわからなかった」など、被災時という非常事態での真に迫った声を掲載しています。

 また、避難所での口腔ケアや心のケア、血栓を防ぐためのレクチャーなど現場での保健活動を伝えつつ、「高血圧を防ぐ10か条」など、被災時に病気を防ぐポイントも紹介しています。

 

★図表で解説

 読売新聞では「見る」というタイトルでフルカラーのグラフィック特集を掲載しており、ヨミダスのおすすめリンクにも「平成・令和」→「解説」内にまとめてあります。

 本年の能登半島地震後に掲載された1月28日<[見る] 能登半島地震>では、1月1~22日の間に能登地方で発生した震度1以上の地震の震源を、マグニチュード別に色分けして丸印で示し、地図に重ねて可視化しています。

 1月1日の16時10分に発生したM7.6の本震は珠洲市の北側に表示され、そこから東西に1500回以上の地震の震源が広がっています。
 さらに過去の地震と比較できるように時系列で地図を掲載しており、複数の断層が連動した可能性の高い今回の地震は、過去20年に起きた地震と比べて震源域が一気に広がり、頻度も格段に増していることを瞬時に視覚的に捉えることができます。

 

★シナリオで備える

 2020年から連載している「防災ニッポン」では、災害時の様々なシナリオを想定し、命を守るための備えを確認できる情報を伝えています。こちらも、おすすめリンク内の「平成・令和」→「経済・暮らし」からまとめて見ることができます。

 能登半島地震直後の1月11日に掲載された、<[防災ニッポン]特別編 冬の避難所生活 シナリオ 夕方大地震 冷える体育館>では、冬の避難所で低体温症を防ぐために、「防寒着の着用や重ね着、体を寄せ合うことなどが効果的」「ブルーシートを敷くだけでは寒冷地の夜はしのげない。床から体を離すことが重要だ」など、専門家の見解を紹介。即席トイレや簡易おむつの作り方も図解しています。

 その後も、能登半島地震でも被害の多かった「木造住宅の耐震化」に焦点を当てた回(2月16日)や、「地震後の長期断水」をテーマに水の備蓄や節水の工夫についてまとめた回(4月11日)など、実際に即したシナリオが並びます。

 中でも5月12日<[防災ニッポン]マイ・タイムライン 水害避難 時系列で計画>では、比較的すぐに実行できる災害対策として、災害時における個人や家族の避難行動を事前に時系列で決めておく「マイ・タイムライン」を紹介しています。状況ごとにどのような備えをし、どこに避難するかなど、家族で話し合ってあらかじめ整理しておくことで、いざという時の行動基準となり、家族の安全を守ることにつながります。

 記事では、マイ・タイムラインのサンプル表を掲載し、作成に役立つWEB上のツールやひな型も紹介しています。

 

 刻一刻と変化する災害時の状況を瞬間ごとに留め、記録している新聞紙面。

 また、自然災害そのものを食い止めることはできなくとも、被害を少しでも小さくするための分析や情報提供を日々積み重ねています。災害を振り返り、備え、乗り越えるための情報源として、ヨミダスがお役に立てば幸いです。(真)