「二刀流あれやこれや」
「二刀流」と言えば宮本武蔵が断然有名でしたが、今は何と言っても野球の大谷翔平選手でしょう。打者でも投手でも超一級。昨年はリアル二刀流が米大リーグを席巻し、日本人は鼻高々でした。しかし、定番から変わり種まで二刀流も多士済々。読売新聞データベース「ヨミダス歴史館」から紹介します。
まずは本家・宮本武蔵から。まだ明治時代だった約130年前、1893年3月11日朝刊に「宮本武蔵の赤樫の木刀、細川侯爵家に伝わる」という記事が出ています。二刀流の元祖が常に所持していたという木刀。さぞかし強そうなものかと思いきや、「しごくか細い赤樫(あかがし)で作られ、剣術を知らない者でも5、6時間続けて振り回せそうに見える」とのこと。強い武器に見えないところが、逆に剣豪のすごみかもしれません。
ところで、大谷選手の二刀流、ただのニックネームではありません。米大リーグのルール変更で、投手、野手に加え、二刀流選手が登録可能に。1シーズンで投手として20イニング以上、野手で20試合以上先発などが条件です。2019年12月5日朝刊[球景2019]によると、「大谷ルール」とも呼ばれたこの新たな試み、かなり厳しい条件で制度として疑問視する声があったほど。軽々クリアするとは、さすが第一人者です。
二つを同時にこなす二刀流。大谷選手の影響か、近年の二刀流はスポーツ選手が主流ですが、約40年前の1983年9月11日朝刊「蔵相、得意の“二刀流発言” どうとも取れる減税時期」は、大臣の“どっちつかず”の二刀流。国会審議を停滞させまいと、急所は否定も肯定もしません。こうした言葉の二刀流は、政治家のしたたかさとでも言うべきか。いずれにしても「保守本流の政治家は、みんなこの手で難局を乗り切ってきた」のだとか。(む)