「お雑煮いろいろ」
読売新聞では、1899年(明治32年)12月12日に「諸国雑煮の募集」の社告を掲載、「奥州のもの、九州のもの、さては北陸のものをも一つに集めて、雑煮製法の融通を行うは、時節がら趣味ある事なるべければ、吾社はここに諸国雑煮の様式製法を募集して、逐次紙上に掲げんとす」と読者に投稿を呼びかけました。
これに応えて集まったのは、「京都」、「備中」(岡山)、「讃岐」(香川)、「筑前博多」(福岡)、「大和」(奈良)、「岩代」(福島)、「常陸」(茨城)、「上総」(千葉)、「甲斐」(山梨)、「越後」(新潟)、「下野」(栃木)の計11地域のお雑煮。廃藩置県以前の地名が出てくるのが時代を感じさせます。
これらは[諸国雑煮]のタイトルで、1900年(明治33年)元日から3日にかけ掲載されています。この中から二つばかりご紹介します。
まず京都。「味噌汁立にて小芋、大根、焼豆腐を加え上に鰹節を大形に削りたる、花松魚(はながつお)というをかけ、餅(もち)は小餅と称する小さき丸形のものなるが焼かずして鍋に入れ暫く煮る、但し元日には人の頭に立つを祝うとて頭芋(八つ頭のこと)の大なるを競うて入るるなり」。関西出身の筆者には、なじみ深い雑煮です。
続いて讃岐。「直径2寸位の円き小餅を作り其中に餡(あん)を入れて饅頭(まんじゅう)の如くし味噌汁にて煮たる上大根及人参を良き程に切りて入れるなり」。スイーツと料理の中間のような不思議なお雑煮です。2021年11月18日香川県版の「[四国キッチン]あんもち雑煮 華やぐ正月の定番」でも、同じような雑煮が紹介されており、現在にもしっかり受け継がれていることが分かります。(は)