「忠犬ハチ公」
東京・渋谷駅前の待ち合わせ場所と言えばハチ公像。
今年はそのモデルとなった秋田犬ハチ公が生まれて100年だそうです。紙面から面白そうな記事をピックアップして紹介します。
★プロフィル
今年元日付の秋田県版<[秋田犬の100年](1)>には、ハチ公像の経歴が詳しく出ています。
「ハチ公は1923年、同県大館市に生まれ、24年に東京帝国大(現・東京大)の上野英三郎教授の手に渡った。25年に上野教授が急逝した後も、渋谷駅に通う姿が新聞やラジオで話題になり、銅像建設を求める声が高まった。初代の像は34年、ハチの生前に彫刻家・安藤照さんが制作し、渋谷駅前に設置された。その後、太平洋戦争下の金属不足で供出され、48年に照さんの息子、士(たけし)さんが現在の銅像を完成させた」
初代の銅像は、まだハチ公が生きているうちに作られていたんですね…。
★スター扱い
1934年(昭和9年)の<ブロマイドまで売れる 忠犬ハチ公の銅像除幕式>(4月22日夕刊)では「駅前にはハチ公のブロマイドからハチ公煎餅(せんべい)、ハチ公チョコレート売りまで飛び出すなど、渋谷駅を中心にこの日一日はハチ公デーで大変な賑(にぎ)わいであった」とフィーバーぶりを伝えており、「主賓のハチ公も(中略)嬉しそうに太い首を何度も下げた」とか。
★映画化も
「スター」となったハチ公には、当然?映画出演の話も出てきます。
<[話の港]ハチ公の映画>(1934年2月17日朝刊)では、新東映画製作所が映画化を進めており、すでに3分の1ほどが出来上がっているとあります。しかし、残念ながらこの映画がその後どうなったかは調べても分かりません。
結局、現在、よく知られているのは「ハチ公物語」(1987年公開、神山征二郎監督)とハリウッド映画「HACHI 約束の犬」(2009年公開、ラッセ・ハルストレム監督)の2本です。
★最期は
1933年(昭和8年)<世界の名犬に… 純情のハチ公 渋谷駅で温い「晩餐会」>(11月23日朝刊)には写真も付いており、生前の姿を見ることができます。ただ、この記事では、ハチ公は「肉類も全部食べることが出来ぬ程に老衰」とかなり弱っている様子でした。
それから1年4か月後、渋谷駅から2町(約220メートル)ほど離れた路地で冷たくなっているのが見つかりました(<「恩を忘れるな」の主 忠犬「ハチ公」の死 数え切れぬ 名誉の生涯>=1935年3月9日夕刊)。
記事中に「駒場農大江本博士執刀で解剖のうえ死体を剥製(はくせい)にして上野科学博物館に寄付、死体の一部は青山墓地の故上野博士墓石のかたわらに葬ることになった」とあります。
剥製を作る際にはこんなこぼれ話も。秋田犬はふつう、耳がピンと立っていますが、ハチ公は犬にかまれて左耳が垂れ下がっていたのです。剥製の耳を立てるか寝せるか、議論の末、「教育資料にするのが主」であるとして、両耳を立てることにしたそうです(<剥製のハチ公両耳を立てる いよいよ近く完成 東京科学博物館へ>=1935年5月29日朝刊)。
ちなみに渋谷の銅像は、ありし日のハチと同じく左耳が垂れています。渋谷駅を通ることがあったら、見てみてください。(は)