戦時版よみうり

太平洋戦争中
日本国民が得ていた情報

国家総動員の
実情がわかる資料

「戦時版よみうり」とは、1944年(昭和19年)3月から約1年間、読売新聞本紙とは別に発行していた勤労者向けのタブロイド紙です。戦況悪化の中、国民に提供されていたニュースから日々の暮らしぶりまで、コンパクトな紙面から読み取ることができます。
※「戦時版よみうり」の紙面画像のうち、1944年6月以降については県立長野図書館所蔵の紙面を使用しました。

「戦時版よみうり」とは?

「戦時版よみうり」は、戦意高揚と生産増強のため、「産業戦士」と呼ばれた工場や農山漁村の勤労者向けに発刊された新聞です。忙しい勤労者が短時間で理解しやすい内容を目指し、論評などは控えた独自の編集が特徴です。

1944年に入って戦況が悪化してきたことにより、新聞用紙の生産が大幅に減少し、各新聞社とも夕刊の発行が難しくなってきました。戦時版よみうりの大きな目的は地方への配達の確保でした。夕刊の配達地域を整理し、サイズをタブロイド判にすることで用紙を確保したのです。ほとんどの紙面がそのまま職場や学校の掲示板に貼ることができるレイアウトになっているのも、特徴の一つです。

戦況だけでなく、地方の様々な活動も記事になっています。読者のニーズに応えて囲碁将棋や小説なども掲載しており、戦時下の暮らしの実情が幅広くつかめる内容になっています。

戦時版よみうりの特徴

本紙と違い、勤労者にわかりやすく報道

2つの紙面を比べると、戦時版よみうりは大きな写真を使って勤労者の興味を引くことを意識しているのがわかります。

戦時版よみうり

戦時版よみうり 1945年3月2日戦時版よみうり1頁

読売新聞 本紙朝刊

読売新聞 本紙朝刊
1945年3月1日本紙朝刊1頁

地方の暮らしがわかる

わが街わが村・ふるさと短信・職場のたより

地域の農業・漁業、⼯場や学校の様⼦、⾷糧や疎開事情など、きめ細かな情報を発信しています。

1945年1月15日付
1944年5月8日付
1944年6月24日付

国民の命を守るために必要な情報

防空関連の記事

「戦時版よみうり」は、⼯場や農⼭漁村の勤労者向けに発⾏していた新聞ということから、国⺠レベルでの空襲に対する準備や訓練に関する情報も多く提供していました。当時考えられていた焼夷弾による⽕災発⽣時の対処⽅法、財産の守り⽅、⽇本各地で防空活動をしていた警防団の情報など、戦時中の⽣活に密着した内容です。このほか⽶軍の爆撃機B29や国内外の空襲を分析した記事もあります。知りたいキーワードを⼊れて、当時の国⺠が得ていた情報を検索してみてください。

1944年3月20日付
1944年6月19日付
1944年8月23日付
1944年6月19日付

きょうの話題

国際情勢や戦況をはじめ、日本国内の食糧事情など、さまざまなテーマについてわかりやすく解説しています。

1944年3月10日付
1944年3月11日付
1944年8月28日付
1944年3月2日付

女性の防寒服装

冬に備え、働く⼥性が動きやすく温かく過ごせるように、服装のアレンジ⽅法をイラスト⼊りで説明。約300⼈の⼥性を対象に背、胸、腹、腰、脚、⼿のうち、どこが寒く感じるかアンケートをとった結果なども掲載しています。

1944年10月28日付
1944年10月17日付

戦意高揚の標語や山本元帥の手紙も

これで行こう

題字下にある戦時スローガン。読者の戦意⾼揚を促す⾔葉などを掲載。

1944年3月31日付
1944年4月10日付
1944年5月11日付
1944年3月1日付

増産遺言「山本元帥の手紙」

真珠湾攻撃を指揮した連合艦隊司令⻑官・⼭本五⼗六は、⽣前に友⼈や⾝内、⼀般市⺠などに多くの⼿紙を書きました。戦時版よみうりでは、これらの⼿紙を紹介し、彼の⾔葉の解説もしています。

1944年9月13日付
1944年9月7日付
1944年9月8日付

娯楽コーナーも数多く掲載

漫画「のらくろ」

野良犬を主人公にした漫画「のらくろ」が戦時版よみうりに掲載されていました。のらくろが訓練所に入所し、指導員になったあと、出陣するところまでが描かれています。

1944年9月8日付
1944年10月28日付

謎のお蔵

なぞなぞは人気のコーナーの一つでした。

1944年9月1日付
1944年3月31日付
1944年4月5日付
1944年12月28日付

映画関連の記事

戦時下でも映画は作られ続け、紹介記事なども掲載しました。

トリック物語

「ハワイ・マレー沖海戦」「加藤隼戦闘隊」など迫力ある映像をどうやって撮影したのか、記者がそのからくりを解説。のちに「ゴジラ」「ウルトラマン」などの特撮で知られることになる円谷英二さんの苦心談など、戦後の映画技術につながる興味深いエピソードが紹介されています。

1944年3月5日付
⼀番美しく

黒沢明監督の第2作目「一番美しく」の撮影所を記者が訪問、4人の出演者・矢口陽子さん、羽鳥敏子さん、谷間小百合さん、河野糸子さんを密着取材しています。名前を伏せて実際に軍需工場で数か月働いてから撮影を始めており、戦時中の勤労女性の貴重な記録にもなっています。

1944年3月26日付

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