Skip to content

ヨミダス

ご契約済みの方はこちら
インタビュー 静岡文化芸術大学教授

磯田道史さん

いまだ知られざる事実を求め、神田古書店街や地方図書館を巡り古文書をひもとくのを何よりも楽しみとする磯田先生。好奇心のかたまりで無類の歴史好きは、ヨミダス歴史館にも興味津々。「武士の家計簿」の主人公、猪山成之に関する記事を、驚きとともに発見し、「もっと早く出会いたかった! これがあれば『武士の家計簿』もさらに充実したものになったかな」と、苦笑い。

寄り道、回り道が楽しい

いそだ・みちふみ
専門は社会経済史学、日本史学、歴史文学。難解な古文書を読み解き、平易な文章でわかりやすく読者に伝える文筆に定評がある。2003 年新潮ドキュメント賞受賞作「武士の家計簿」は映画化された。

歴史の面白さは、何が出てくるか分からない、史料の森に迷い込む楽しさですね。探し物を見つけて戻って来るだけの往復運動では終わらない、寄り道、回り道の連続。それが楽しい。

今までは神田の古書店街や地方の図書館がその対象でしたが、これに、ヨミダス歴史館が加わりました。想像以上に雄弁な史料だったので、とにかく驚いています。

広い、全体的な見方をするのに、新聞のデータベースは最適ですね。歴史という全身をスキャンしているといえばいいのかな。物事をみるとき、一部だけをみて全体を判断しては危うい。巨視的な尺度が必要であり、歴史館はそれに十分資するものでしょう。大学の授業にも取り入れたいと思いますが、それ以上に、小学生や中学生にこそ使ってほしいですね。

歴史は史実を覚えるだけの暗記物ではありません。過去と現在のキャッチボールです。ヨミダス歴史館は、格好の相手になってくれるんじゃないでしょうか。

操作性も抜群ですから、ひとつの発見が次の興味をかき立て、ワンクリックでたどれて、どんどん広がっていくうちに、今を生きる自分の問題へと跳ね返ってくる。それこそが歴史を「学ぶ」ことだと信じています。

歴史の鉱脈を掘り進む

歴史にもまた鉱脈のようなものがあり、それを発見し、掘り進んで行くのが楽しい。ある事件や人物が関連するであろう事柄を思い描く力を働かせることが、大きな鉱脈を掘り当てるコツでしょう。知れば知るほどはまるのが、歴史の魅力です。

ヨミダス歴史館の登場は、歴史好きを増やしてくれそう。国会図書館へ通って一日がかりで調べていたものが、パソコンで一時間足らずで分かるのですから、これはもう、すごいことです。歴史学者だけが独占していた史実が、誰にでもあまねく行き渡るのだから、「知の民主化」を促すと言っても過言ではないでしょう。

それまでブラウン管テレビの低い解像度で見ていたものが、高画素のハイビジョンによってディテールまでくっきり映し出されてしまうようなことが、歴史研究においても起こってくるような予感がします。通念やら通説なるものがどんどん崩れ、一人ひとりの史観というものが問われるようになってくるのではないでしょうか。

歴史学者の役割も当然変わってきますでしょうし、また変わらなきゃいけないと思う。史実は現にそうあったものですが、そのまま掛け値なしに受け取れるものでもありません。未来へ役立てるためには、その史実を生んだ「過去の行きがかり」をレファレンスする「歴史の臨床学」が必要になってくる。今なら歴史上の地震、津波を知ることが一番の急務です。それを担うのが、これからの歴史学者の務めだと思っています。
(2012年4月10日)

「ヨミダス」のお申し込み

サービスご利用の前に利用規定をお読みください。

ページ上部へ